しかし、そのような単純な作業に明け暮れると、人間は最良を求めて自ずと進化していく。コンサート会場で生の音楽を楽しむように紡ぎだされる音の束に耳を傾けようにも、実際オンタイムでそこにいなければ圧というか、本当の臨場感は得られない。どのようにライブに近づけるかを模索する、それが無観客かつストリーミングで伝達するものの大きな課題となった。
ご存じの方も多いと思うが、フラッシュモブは“演奏”と“ドッキリ”をカップリングしたパフォーマンスのひとつである。もちろん楽器や声を使う演奏ばかりではなく、ダンスやバレエなどを交えたものもあって、そこに計画されたサプライズとして関係者外の人々を次第に夢の世界に誘う、あるいは同じ場にいることであたかも演者の一員にでもなったかのように幻想の空間に包み込むやり方とでも言おうか。
記憶に残るものとして、ベートーヴェン第九交響曲の合唱の部分、あるいはラヴェルの「ボレロ」といったサプライズ演奏が挙げられる。人々の行き交うスクエアに、自然を装い現れた者たちが自分たちのパートを歌い、奏しはじめてあたかも口ずさんでいる、何気なく演奏しているだけのような様相ながら次第に音を重ねる演者たちが増えていき、知らぬ者たちにとっては、これって何なの?という疑問を抱かせつつ、終部に向かうにつれてその演奏は盛り上がりいつの間にかそこにいるものすべてが感極まるというものであった。
マンネリ化してきたコロナ禍における楽曲配信に様々な工夫が見えはじめたのが、ちょうど昨年の今頃だったろうか。据え置きのカメラに収録された演奏をただただ配信していくというやり方を進化させたものの中に、フラッシュモブ的なものをオンラインパフォーマンスと組み合わせた見せ方が登場してきた。
わたしがはじめて目にしたものは、前出のローマ歌劇場管弦楽団のメンバーがモザイクのように区切られたコマ映像の中で自分のパートを演奏しながら、それに一人ひとりと加わることによって大きなアンサンブルに発展していく、というもの。配信映像ではありながらそれぞれの役割が手に取るようにわかり、何よりそれを大人数でやり遂げる達成感をそこに感じながら気持ちは演奏のボルテージの如く高揚していく。ここには、オンラインを越えた感情の伝達を体感することができる。
音楽の素晴らしさしかり、人間の知恵とはあまり感情を露出し難いAI技術の中にも浸透する力があるということをあらためて感じている。
堂満尚樹(音楽ライター)
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はじめました。ぜひご覧ください!
「ベートーヴェン生誕251年ウィーンの旅」
オンラインツアーを開催いたしました!
「ベートーヴェン生誕251年ウィーンの旅」
2021年04月14日(終了)
郵船トラベル オンライン音楽ツアー「ベートーヴェン生誕251年ウィーンの旅」は無事終了いたしました。
たくさんのお申し込みをありがとうございました!
第2弾は6月下旬ごろを予定しております。どうぞご期待ください。
オンラインツアーの様子を少しだけご紹介いたします!
レディクリスタル完全貸切とプライベートコンサート
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「レディクリスタル」就航30周年×郵船トラベルの共同企画
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2021年4月1日(木)~12月20日(月)の平日出発 1日1組限定